ヴェイパーフライは本当に禁止になるのか!?

 こんにちは。足と靴の専門店『くずは優足屋』の西岡です。先日の箱根駅伝でも約8割の選手が着用し、好記録を連発したナイキの厚底シューズ『ヴェイパーフライ』。このブログでも何度か話題にしていますが、昨日、世界陸連が厚底シューズに対して規制をかけるというニュースが飛び込んできました。シューフィッター&ランナーの目線で今回のニュースについて書いていきたいと思います。

ナイキオンラインストアホームページより引用
目次

厚底シューズのどこが問題なのか!?

とりあえず私が読んだ元ネタ記事をリンク張っておきます。↓

ナイキ厚底シューズ 国際陸連が禁止か 複数英紙報じる…記録更新続々、箱根も席巻

上のリンクの記事の中にもありますが、国際陸連ではシューズに対して以下の規定があるようです。

「競技に使用されるシューズはすべてのランナーが合理的に利用可能でなければならず、不公平なサポートや利点を提供するものであってはいけない」

この部分にナイキの厚底シューズが抵触するのかどうかがポイントになってくるとのこと。

まず、『全てのランナーが合理的に利用可能』という点についてはナイキの厚底シューズは3万円を超えるシューズとしては高額なものですが、ナイキと契約しないと履けないわけでもなく、一般に販売しているものなので問題ないでしょう。

高反発ミッドソールは企業努力の賜物

 問題は『不公平なサポートや利点を提供するものであってはいけない』という部分。そもそも全員が履くことができるシューズなので不公平にはならないとは思いますが、ナイキの厚底のシューズの特徴は『ズームX』という高反発のミッドソールとスプーン状のカーボンプレート。

 仮に『ズームX』という高反発のミッドソールが不公平な利点を提供するものだとすれば、アディダスが開発した『ブーストフォーム』という高反発素材はOKなの?野球のボールみたいに反発係数を測定して線引きをするのかな?

 ちなみにこのミッドソール素材の開発というのはナイキだけでは無く、各メーカーがどうやって軽くするか、どうやって反発を強くするか研究に研究を重ねてしのぎを削っている部分です。アシックスであれば『FLYTEFOAM』、アディダスなら『BOOSTFOAM』、ニューバランスなら『FUEL CELL』など。

 ナイキとしてはマラソンで2時間を切るために研究し尽くして開発した新素材のランニングシューズで好記録が続出したからって、急に規制をかけるなんて言われたらたまったもんじゃないでしょうね。

カーボンプレートは短距離では既に使用されている

 もう一つの特徴。スプーン状のカーボンプレート。これが不公平な利点を提供するものだとするとどうでしょう。実はカーボンプレート自体は陸上競技で昔から使用されているんです。反発性を高めるためにシューズにカーボンのプレートを使用したスパイクが既にあります。

 そしてもう一つ、パラリンピックの選手が使用している義足もカーボンを使用しています。以前、ピストリウスという義足の選手が健常者の大会にも出場するなどして話題になったことがありますが、その際もカーボンの反発性が議論されました。

 ナイキの厚底シューズのカーボンプレートの使用が禁止となったら、短距離やパラリンピックはどうなんだということになります。なのでカーボンプレートの使用自体が禁止にはならないと思います。

 ナイキのヴェイパーフライが登場して以降、他のメーカーも対抗策を講じてきています。ニューバランスはカーボンプレート搭載の軽量スピードモデル『FUEL CELL5280』を出していますし、箱根駅伝10区区間新の島津君はミズノのプロトタイプです。

 現在はナイキの1強という状態ですが、これはそう長くは続かないでしょう。テクノロジーの進歩により、各メーカーがより良いもの、タイムの出せるものを出してきます。

規制されるとすればソールの厚みか?

 なかなかミッドソールの反発やカーボンプレートによる反発を規制するのは基準が難しい部分ですので、今回規制されるとしたら、靴によるアドバンテージを極力少なくするため、ソールの厚みを2cm以下に規制するとかそんな感じになるのかなと思います。

 ヴェイパーフライは世界第一位のスポーツブランド・ナイキのシューズです。当然大きなお金も動いていると思いますし、ナイキと世界陸連はズブズブなんて噂(あくまで噂なので真相は知りませんが・・・)もあり、恐らく今回の規制。極端な規制にはならないように思います。

追記:ロードレースではソールの厚みが40mm以下のシューズが使用可能となり、現行のヴェイパーフライは40mmに収まるので使用可能となりました。

 おそらくシューズのソールの厚みを現状のものよりもやや薄く制限しないといけない程度なのではないかなと思います。その中でまた技術革新が進んで新たなシューズが生まれてくることでしょう。

 個人的には厚底のシューズにすると体幹がしっかりしていないと走りがぶれるので難しいシューズだと思いますし、ナイキのテクノロジーの賜物だと思いますので、規制しなくてもいいのではというのが持論です。

 ランナー&シューフィッターとしてちょっと気になるニュースだったので長文書いてしまいました。最後までお読みいただいた方ありがとうございます。

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